主な診療内容

神経内科

神経内科とは?

「神経内科」は一般の方にはまだなじみの薄い診療科かもしれません。しかし世界的にはその歴史は古く、最近では日本でも神経内科を標榜する病院、診療所は増えてきています。
たとえばアトランタ・オリンピックで、ボクシングの金メダリストであるモハメッド・アリが聖火ランナーとして参加しましたが、彼はパーキンソン病を患っていました。歴史で言えば、魏の曹操も頭痛持ちで治療を受けていたといいます。どちらの病気も神経内科の対象疾患です。
神経内科は「脳・脊髄・末梢神経・筋肉の障害によって起こるさまざまな病気を専門とする科」と言えるかと思います。神経といっても脳から筋肉の広範囲にわたり、障害の性状も炎症、変性、腫瘍などいろいろです。どこに、どんな障害が起こるかで症状はかなり異なります。

神経内科を受診される方の主な症状としては下記のようなものがあります。

主な症状

  • 時々意識がなくなることがある。
  • 物忘れがひどい。日時や場所などを間違えることが多くなった。
  • 言葉が出にくい。ろれつが回らない。
  • ものが二重に見える。顔が曲がっている。
  • ものが飲み込みにくい、むせる。舌が動かしづらい。
  • 手足の力が入らずうごかしにくい。
  • 手足がふるえる。動作が緩慢になってきた。
  • 頭痛、めまい、しびれがある。

神経内科の対象となる疾患は片頭痛などの日常的な疾患から国の特定疾患(難病)とされるまれなものまであります。主に下記の疾患があります。

主な疾患

  • 脳血管障害(脳梗塞・脳出血・脳血管性痴呆など)
  • 認知症 アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症
  • パーキンソン病
  • 頭痛(片頭痛、緊張型頭痛など)
  • 顔面神経麻痺、顔面けいれん
  • てんかん
  • めまい
  • しびれ

神経内科の診察法

神経内科では、症状の起こりかたやその後の経過が重要です。このため詳しくお話を聞いてから診察に入ります。診察はハンマーやペンライト、音叉などを使い神経の異常をチェックします。目の動き、顔面や舌の動き、手足の筋力や感覚、手足のバランスなどを診ます。お話や診察で神経内科の病気が疑われる場合、治療を考えるかあるいはさらに精密検査を依頼することになります。

神経内科の代表的な疾患

上記のように神経内科で扱っている疾患は多岐にわたりますが、そのうちでも代表的なものをいくつかピックアップしてご案内します。

パーキンソン病

脳内のドパミンという物質が不足するために起こるといわれています。日本では1000人に1人の頻度といわれています。

症状

典型的な症状は4つあります。

振戦:
安静時の手足の「ふるえ」。左右どちらかから始まる、比較的ゆっくりしたふるえです。
固縮:
首、腕、脚などが固まって動かしにくい症状です。
寡動:
動作緩慢。全体に動きがのろくなります。顔が無表情になります。
姿勢反射障害:
バランスを崩した時立ち直れなくなります。転びやすくなります。
その他、声が小さくなる、字が小さくなる、歩き方が小刻みになる、歩き出しの一歩目が出にくい、歩くとき前かがみになってしまう、左右どちらかの肩が下がってななめになってしまう、などの症状が出ることもあります。
  • その他自律神経症状、便秘、嗅覚低下、睡眠中の異常言動、行動、幻視

診断

経過と診察所見が重要です。脳梗塞などでも類似した症状が出るので、頭部MRIなどで他の原因がないかチェックします。

治療

最近は薬の種類も豊富になり、よりきめ細かな治療が出来るようになってきています。

  • L-ドーパ(レボドパ):マドパー、メネシット、ネオドパストンなど。
    脳内でドパミンになり症状を改善します。最も効果があり、治療の中心となるお薬です。しかし長期的に服用すると、徐々に効果が低下したり(wearing off)、症状の日内変動が著しくなる(on-off)ことがあります。このため、この薬だけに頼らず他の薬と併用した方が良いといわれています。
  • ドパミン作動薬:ペルマックス、カバサール、パーロデル、ドミン
    ドパミン受容体を刺激することにより効果をあらわす薬です。レボドパ程ではないですがそこそこ効果があり、on-offなどを来しにくいため、最近は第一選択薬とされることもあります。
  • MAO-B阻害薬:エフピー
    ドパミンの分解を抑えてドパミンの作用を強めます。神経保護作用があると言われております。
  • アマンタジン:シンメトレル
    ドパミンの放出を促す薬です。インフルエンザの治療薬でもあります。
  • 抗コリン薬:アーテン、アキネトン
    コリンという物質を抑制することによりドパミンの働きを助ける薬です。振戦に対して効果があります。

脳梗塞、一過性脳虚血発作

脳梗塞は脳の血管が閉塞して起こる病気です。大きく分けて、脳の血管自体が狭くなって起きる「脳血栓症」と心臓や頸動脈から血の固まり(血栓)が流れてきておきる「脳塞栓症」の二つがあります。
脳血栓症は夜間、早朝に比較的緩やかに発症し、症状は数日間で徐々に進行することが多いとされます。
脳塞栓症は不整脈(特に心房細動)や心臓弁膜症などを持つ方によくみられ、日中活動時などに突然倒れることが多いといわれています。

一過性脳虚血発作は一過性に脳梗塞様の症状(下記)が出ることです。多くは数分~数十分で元に戻りますが、これは脳梗塞の前兆であることが多く、注意が必要です。

症状

脳のどの部位に脳梗塞が起こったかで異なります。

  • 麻痺:力が入りにくい。右半身、左半身など片側であることが多い。
  • 失調:小脳からくるふらつきです。立っておれずすぐ転んでしまう、手先の動作が不器用になる。
  • 失語:思っている言葉がうまく話せない、聞いた言葉が良く理解できない。
  • 構音障害:口がもつれる、呂律が回らない。
  • しびれ:やはり右半身、左半身という分布の仕方が多い。

診断

経過と診察所見が重要です。脳梗塞などでも類似した症状が出るので、頭部MRIなどで他の原因がないかチェックします。

治療

急性期には入院で抗血小板薬の点滴などが行われます。
ここでは慢性期の治療につき述べます。基本的には再発をおこさないようにすることが重要です。

  • 危険因子の改善
    高血圧はもっとも大きな因子です。普段から血圧をチェックし、食事療法や降圧薬で血圧を調節していくことが重要です。
    糖尿病も大きな因子です。これも普段から食事療法や治療薬で血糖値をきちんと調節することが重要です。 タバコも大きく影響するので、禁煙をお勧めします。
  • 抗血小板薬:バイアスピリン、小児用バファリン、パナルジン
    血小板の働きを抑えて、血管がつまるのを防ぎます。脳梗塞の再発予防ではもっとも基本的なお薬です。
  • 抗凝固薬:ワーファリン
    心房細動、心臓弁膜症などからの脳塞栓症が疑われる方はこのお薬を服用して頂いてます。納豆、クロレラなどは効果を弱めますので控えてください。また少し出血しやすくなりますので、抜歯のときなどはご相談ください。
  • 脳循環代謝改善薬:セロクラール、サアミオン、ケタスなど。
    脳の働きを助け、脳梗塞の後遺症からくるめまいやボーっとした症状などを改善する薬です。

頭痛

ひとくちに頭痛といっても色々な原因があります。外来を受診される方の頭痛のほとんどは緊張型頭痛あるいは片頭痛といわれるものです。

緊張型頭痛

頚椎の変形や肩こりによる筋肉痛が、肩から後頭部にひろがって起こるものです。両腕や肩の体操や運動、マッサージなどが効果あります。また精神的緊張、ストレスなどにより増悪するためこういった要素を取り除くことも大事です。薬としては、抗炎症薬(ロキソニンなど)、筋緊張改善薬(テルネリン、ミオナールなど)、抗不安薬(リーゼ、デパスなど)を処方しております。

片頭痛

読んで字のごとく、頭の片側が拍動性に(ズキズキ)痛む発作が起こるものです。人によっては頭痛の前兆としてキラキラした光の点が見えたり、視野が狭くなったりすることがあります(閃輝暗点)。また吐き気、嘔吐なども伴うことがあります。片頭痛は脳の血管の収縮、拡張により起こると言われています。

治療薬ですが、

  • 抗炎症薬:ロキソニンなど
  • エルゴタミン製剤:カフェルゴット
  • トリプタン製剤:イミグラン、ゾーミッグなど
  • 漢方薬:呉茱萸湯、五苓散

などがあります。(心筋梗塞などの既往のある方はトリプタン製剤は使えません。)

以上簡単に神経内科につき紹介いたしました。上記に類似した症状でお悩みの方はお気軽に受診ください。